工業会活動報告

展示会講演会 参加・見学報告

第17回スマートエネルギーWeek 2021 主催者セミナー 参加報告

    概要:ビッグサイトで開催されたスマートエネルギーWeekの主催者セミナーに参加した。
    スマートエネルギーWeekは年3回行われる展示会で、今回は水素・燃料電池展、太陽光発電展、二次電池展、スマートグリッドEXPO、風力発電展、バイオマス展、火力発電EXPO、そして、資源循環EXPOの計9つに分かれていた。
    3日間の来場者数は28,345人(主催者発表)。

    セミナー:新たな事業環境下での太陽光発電システムの市場展開
    (株)資源総合システム
    代表取締役 一木 修 氏

     日本の太陽光発電に関するこれまでの重要な政策決定を振り返ると、まず、1974年の「サンシャイン計画」で、太陽光発電(PV)システムの開発や実証開始でスタートした。その後、1994年の「新エネルギー導入大綱」閣議決定、2002年の「エネルギー政策基本法」施行で補助金の支給による普及の取組が始まり、2008年の「低炭素社会づくり行動計画」閣議決定で、PV導入目標を2030年に53GWと太陽光社会の緊急提言が盛り込まれた。
     そして、2009年の「エネルギー供給構造高度化法」制定により、PVの余剰電力の倍額買取(48円/kWh)の開始、2011年の「FIT法」制定で再エネ電力の固定価格買取制度が開始された。これらによりPVシステムの急速な普及拡大が進んだ。
     その後、2014年の「第4次エネルギー基本計画」閣議決定で、再エネを国産エネルギーと位置づけ、PV導入目標を2030年に64GWに制定。2018年の「第5次エネルギー基本計画」閣議決定で再エネの主力電源化を明記された
     これらの政策の結果、2020年時点でのPV年間導入量は8.2GW、累積導入量は71.4GWになった。

     世界の状況を見ると、主要国は足並みをそろえて、脱炭素政策を推進しており、中でもPVは2020年代の電力増強の主力となっている。
     同じく2020年時点での世界全体のPV年間導入量は130GWを超え、中国:48GW、アメリカ:19GW、ベトナム:10GW、インド:6.5GW等で、累積導入量は850GW規模になる。
     アメリカは、バイデン政権下で再エネ重視のエネルギー政策に転換し、2035年電力のカーボンフリー化を目指す。ヨーロッパは、欧州グリーンディールを推進し、2030年再エネ比率を少なくとも32%と掲げる。中国は2030年にPVおよび風力発電の累積導入目標を1200GWとし、インドは2023年PV累積導入目標を100GWとした。これらの潮流から、PVは成長市場というより、基幹エネルギー市場に移行したと言える。

     一方、日本では、2050年にカーボンニュートラルの実現という国家目標を掲げ、グリーン成長戦略と再エネ型経済社会の創造に取組む方針が示された。
     それに向けて、経産省がエネルギー供給強靭化法の施行により、再エネ利用拡大への制度設計を行い、また、第6次に向けて第5次エネルギー基本計画の見直しを進めている。環境省は2050年カーボンニュートラルの規定するための地球温暖化対策推進法見直し、農水省は農地におけるPV拡大につながる規制緩和、そして自治体レベルでは2050年ゼロカーボンシティ表明が265自治体(2021年2月)にのぼった。
     グリーン成長戦略の中で、2050年カーボンニュートラルの前提は、2050年の電力需要を現状の30~50%増と規定(1.3~1.5兆kWh/年)。その内訳として、再エネ:50~60%、原子力+ゼロエミッション火力:30~40%、水素・アンモニア発電:10%としている。
     これらを実現するために、NEDOがグリーンイノベーション基金として2兆円/10年間を用意するほか、税制面、金融面、規制改革、国際連携等で政府支援する。また、民間240兆円現預金の活用、15兆円の民間研究開発・設備投資、そして3000兆円の世界の環境投資資金の呼び込みの活用も想定している。また、グリーン成長戦略の中で、期待される14の成長産業が掲げられた。
     グリーン成長戦略では、温室効果ガス排出の8割以上がエネルギー由来なので、再生可能エネルギーとその貯蔵をベースとするエネルギー転換が大きなカギを握るが、再生可能エネルギーだけでは2050年のカーボンニュートラルは実現できないことが判る。そして、達成には新たな技術・産業のイノベーションが必要で、それが14分野。特にエネルギー貯蔵技術は不可欠である。

    感想
     本当に太陽光発電を主体とした社会が到来するのか、まだ実感がわかないが、ガラス産業のような素材産業は、エネルギー消費・カーボン排出型産業の典型と言えるので、必然的に何らかの対応を迫られることになる。グリーン成長戦略の14分野のなかに資源循環関連産業が入っていたが、ガラスの強みはその分野にあるので、それを活かした発展ができればと感じた。

    開催日程 2021年3月4日
    参加人数 1名
    場所 東京ビッグサイト