工業会活動報告

展示会講演会 参加・見学報告

All about Photonics 2021 主催者セミナー 視察報告

概要:ビッグサイトで開催されたAll about Photonicsの主催者セミナーに参加した。 この展示会は、InterOpt 2021、 LED Japan 2021、Imaging Japan 2021の集合体である。

セミナー:Withコロナ時代に向けた深紫外LEDの活用法
深紫外LEDによるウイルス不活化の試み

徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所
准教授 南川丈夫氏

   徳島県は、中村修二氏が青色LEDを発明しノーベル賞を受賞した県ということで、光関連の研究および産業育成に取り組んでいる。LEDバレイ構想を掲げて推進してきたが、近年ではポストLED Photonicsということで、徳島大学とともに可視光以外の研究を進めている。これは、紫外線、赤外線、さらにテラヘルツといった光を利用して、5Gの次の通信技術や次の医光連携を目指すものである。その医光連携の一つのテーマが、新型コロナウイルスの不活化である。
   新型コロナウイルスは、コロナウイルスの一種で、重症呼吸器病症候群を引き起こす(SARS、MARSと同様に)。構造上の特徴は、RNAウイルスであること、スパイクタンパクをエンベロープに持ち、サイズは80nm~220nmである。
   このウイルスの現状の問題点は、薬が無いこと、感染拡大しやすい(潜伏期間が1~14日と長い)、重症化リスクが高いことである。
   感染対策としては、3つの考え方がある。体内にウイルスを侵入させない(マスクやソーシャルディスタンス)、体内に吸着させない(手洗い、アルコールでエンベロープのギザギザを壊す)、そして、侵入・吸着しても体内で合成させないことである。加熱殺菌がこれに該当し、紫外線照射も同じである。すなわち、紫外線照射はRNAを変性し、ウイルスを直接的に不活化させることができる。
   紫外線照射の特徴として、エネルギーコストが安い、対象への影響が少ない、非接触、などがあげられるが、紫外線といっても波長により特性が大きく違う。新型コロナウイルスに有効な紫外線は深紫外線あるいはUV-Cと言われる200nm~280nmの波長の光である。この波長域は太陽光にも含まれるが地球表面に到達する前にオゾン層で吸収されるので、地上には無い光である。DNAやRNAの吸収スペクトルも200nm~300nmにあるので、深紫外線の照射で不活化が起こる。
   光源は、従来は低圧水銀ランプが使用されていたが、近年は深紫外LEDが開発されて、非常に扱いやすくなった。
   徳島大学では、医療、LED、光学、工学の専門家によるプロジェクトチームを結成し、新型コロナウイルスを不活化する深紫外線の条件(波長、強度、時間など)のデータ化を進めている。そのデータがまとまり次第、産業界に供給する予定である。

感想
   深紫外線光学系の材質を検討すると、樹脂は劣化されるので使用できないのでガラスの出番となるが、 通常のガラスでは深紫外線を吸収してしまう。よって、深紫外線透過ガラスが必要となる。現状では石英が使われているが、 深紫外線透過ガラスが実用化されれば、成型性・コストの面から需要は大きいと思われる。

開催日程 2020年12月10日
参加人数 1名
場所 東京ビッグサイト