工業会活動報告

展示会講演会 参加・見学報告

名古屋ものづくりワールド 技術セミナー参加報告

    概要:名古屋で開催された7つの展示会の集合体である「ものづくりワールド」に合わせて実施された技術セミナーに参加した。

    展示会: 展示会名は「設計・製造ソリューション展」や「機械要素技術展」等に分かれているが、実際は一つの展示会場で行われ、仕切りも無かったので、実態は「ものづくりワールド」という名の一つの展示会である。
    昨年の来場者数は3日間合計で36,277人だったが、今年はコロナの影響で10,720人と少なかった (主催者発表数字)。

    セミナー:製造品質の安定化を実現するマニュファクチャリングデジタルレシピ
    ~オペレータや加工設備に依存しないモノづくり~
    株式会社日立製作所 研究開発グループ 生産イノベーションセンタ
     主管研究員 寺前 俊哉 氏

     製造拠点の4M(Man,Machine,Material,Method)の違いが、品質に影響を及ぼすことが課題の一つになっている。そのために顧客には変更の際には4M変更届の提出を要請されることが多い。 今回の講演では、熟練者ノウハウや加工設備に依存せず、どこででも安定品質の製造を実現するマニュファクチャリングデジタルレシピによるモノづくりについて紹介された。

     昨今は、世界情勢の不安定さや、コロナウイルス等の伝染病の世界的な伝播などで、従来の大量生産によるコスト低減では大量に在庫が発生するなど、対応できなくなりつつある。 そのような情勢の変化に伴い、シェアリングエコノミーと呼ばれる、サプライチェーンの変化・リスクにフレキシブルに対応可能な生産システムの構築が求められている。これは、デジタル化、カスタム化、サービス化、そしてオープン化を伴った新しい製造方法である。 GMやコマツは、世界中の工場間で、次のキーワードを実践している。
    ・「マッチング」→共通のプラットフォームで繋がる
    ・「オンデマンド製造」→データをアップロードして製造
    ・「シェアリング」→装置を貸し借りする。
    これらは、従来の工場の考え方である「クローズ」から「オープン」への転換であり、必要な4Mリソースを必要に応じて流通させるという新しい製造手法である。それにより、アセットシェアリング(資産の共有)とノウハウシェアリング(ノウハウの共有)が可能になり、デジタルレシピが完成する。デジタルレシピを活用することにより、生産性、投資効率、作業者の技能維持、品質、属人制の排除、が実現できる。

    具体的な例として、同じ会社でも、工場が違うと同じ製品を加工できなかったり、工場に並んでいる同じ機械であっても、同じ品質の製品を加工できない場合が多い。これを現場の職人は、機械の「くせ」を把握して、入力データに補正を加えたり、手のひらの感覚で合わせたりして、品質を維持している。しかし、同じ工場内では調整ができても、国外の工場に出向いて人が補正をするのは難しく、ましてや他の会社であれば不可能であった。 デジタルレシピとは、従来は職人が調整していたことを、機械毎のデータの集積とその解析をすることによって作成される、補正値入りのレシピのことである。データの集積から補正値の作成までは、ビッグデータとAIの技術を活用する。 日立では既に、樹脂の射出成型機、NC加工機、NC旋盤等で実績があるということだった。

    雑感:工場にはノウハウが詰まっていて、それをオープンにすることは、例え工場の稼働率や投資効率が上がっても、失うものが少なくないと感じた。デジタルレシピは、技術をコモディティ化したがる大企業的な考え方という印象を持った。

    開催日程 2020年9月9日
    参加人数 1名
    場所 愛知県国際会議場